「本を読めなくなった人たち」

生活の知恵
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最近、国語を教えていると、さほど長い文章でもなく入り組んだ記述でもないのに、内容を読み取れない生徒がいて驚かされることに多々出会います。

それも、古文どころか明治・大正の文語調は言わずもがな、現代文で書かれた若手作家の平易な文章ですら読み解くことが出来ない生徒が少なからず見られるのです😳

国語ばかりでなく、算数の文章題といった短い文章さえも読み取れず、前提となる条件が分からないので解けないといった場面にしばしば遭遇するのですから…。

そんな子供たちが、全て学力の低い生徒かというと決してそうではなく、思考力の優れた生徒であっても、行間を読んだり誰もが知っているであろう一般的な知識を動員して文の内容を掴むという力が無いという事実に出会い、本当にビックリさせられてしまいます。

最近のニュースなど一般常識と言えるものに疎い一方、興味のある事柄にはとても深く掘り下げる最近の若者について不思議に思っていた時、YouTubeで標題の書籍の著者と2人の編集者が対談するコンテンツを見たのです。

ノンフィクションライターの稲田豊史さんは、以前「映画を早送りで観る人たち」という本を書いて、ドラマや映画を倍速で観る現代の若者について分析していましたが、今回は文章を介在とするテキストメディアというコンテンツについて、若者を中心とした読者層(若者ばかりでなく「切り抜き」で満足してしまう層や動画を見て満足してしまう人)など広い範囲の人たちから、何故いま活字を読まなく(読めなく)なってしまったのかという問題について切り込んでいたのです。

現代人の書籍離れについては出版界も以前から危機感を持っていて、様々な分析がされていましたが、多くは学者であったり知識人であったりと「本を読む側」の人の分析が主であったのですが、著者は「読まなくなった・読めなくなった側」の人たちにリサーチしている所がユニークで、販売数を上げているのだと思いました。

以前の括りだと、本を読まない…即ち学力が低い、論理的な思考ができないといった学生像が浮かび上がって来ますが、著者が対面でリサーチしたのは、優秀な進学校の高校生であったり、有名私大の学生、東大生といった一般的に見て言語化能力が高く、自分の意見を論理的に展開することができる学生が多かったそうです。

これって、効率(つまりタイパね☝🏻)第一で読解を教える一部の塾がやっていることに通じるのじゃ無いかな…と思いましたよ。指示語が何を指すかを読み取るためには、極端な表現では、1〜2行前を見ろとか、又は後ろに書いてあるから、問題を見てから関係のある箇所だけを読め…とか、結論は文章の最後に書いてある…とかいったテクニックですけれどね。

このテクニックは、流し読みをして内容を把握できる力のある子には有効ですけれど、そうじゃ無い子にとってはおまじないみたいに、文章とはそうやって読むものと刷り込みをしてしまう怖さがあると思っています。

そんな受験戦争で時間を奪われ続けた若者世代だけでなく、仕事に忙しいビジネスパーソンから子育て中の親世代にとっては、本は読むための時間を割かなくてはならないタイパの悪い存在となってしまい、スーパーの試食コーナーで食べ歩いて満腹になってしまうと同様、無料の抜粋記事を読んだだけで作品そのものを読んだ気になってしまう人が多いということでした。

確かに、ずっと以前「平家物語」の灌頂の巻を読みたくて、岩波の日本古典文学体系を探しに近所の本屋に行ったのに見つからず、受験用の参考書を買って本を開いたら、全ての行に文法の線引きと解説がしてあってすごくガッカリしたことを思い出しました😓

これって、すごく美しい女性をそのまま見るのではなく、解剖して「これが血管、これが筋肉、これが内臓ですね…」って説明することに通じるのじゃ無いでしょうか?

だから、どんなに素晴らしい文学作品や面白い論説文に出会っても、「結局何が書いてあるの?なんて要約したら正解なの?、主語は?修飾語は?係り結びは?」ってことになって、それが済んだら満腹状態になっちゃうんでしょうね…😅

志望校を選ぶときでもそんな傾向を感じます。

偏差値は?偏差値の高い大学への進学率は?…って、コスパの良い学校を手っ取り早く知りたがる風潮が多いですよね。

でも、学校って偏差値や進学率ばかりでなく、生徒や保護者の雰囲気、学校の歴史と言った校風があるのを理解していないのじゃ無いかな…と思いますよ。

そうやってなんでもタイパ重視、コスパ重視で、簡単に手に入る情報を自分の判断もなく受けとって過ごしていくのは、分かりやすくて楽な反面、大切な事や人との関係、人生の経験を失いかねない危険もあるのでは無いかな…と思っています。

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