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ここ数日、NHKで番宣が続いていた「母の待つ里」の原作を読みたくなり、浅田次郎の原作を購入しようとAmazonで検索したのですが、誰も考えることが一緒なのか完売中で手に入りませんでした。
浅田次郎の作品は、どれも引き込まれるような素晴らしい文章で、私は何冊も読んでいます。「壬生義士伝」や「鉄道員(ぽっぽや)」「地下鉄(メトロ)に乗って」を始めとして、「蒼穹の昴」「中原の虹」「珍妃の井戸」といった清朝末期を舞台とする重厚な歴史小説だけでなく、「プリズンホテル」「金ピカ」「天切り松闇語り」といったワルが主人公の痛快で大笑いできる作品の数々…。
その中でも異色なのは、今回購入した「神坐す山の物語」なのです。
浅田次郎さんのお母さんは、青梅御嶽神社の宮司家の出でした。
この本は、日本武尊を頂く官幣大社の宮司の家柄という誇りを持った一族の昔語りが下敷きとなっています。
徳川家康が武蔵に江戸を開く折に、熊野修験者の出であった先祖が付き従い、甲州との国境の守りを固める役割と共に、この古い歴史を持つ武蔵御嶽神社の宮司に封された誇りと、修験の道が持つ不思議が著作の下敷きになっています。
験力のあったという白髯の曽祖父の元には、憑き物落としを依頼する人が訪れたり、明治の頃の心中事件が起きたりするのでした。
これらの不思議な出来事は、母とは17歳以上離れた伯母の口から、寝物語として沢山の従兄弟達と共に語られることであったり、著者自身の、先祖から受け継いだ不思議な力の発露といった経験として語られたりしていました。
このくだりを読んで、私は「鉄道員」や「異人たちの夏」に見られた不思議への親和性に合点がいったのです。
この本は、民俗学的な風合いのある、とても印象的な作品であると言えます。
浅田次郎さんの作品、まだ読んでいないという方は、どの作品でもいいですから1度手にとってみられることをお勧めします。